当社で鑑定した事例の一部をご紹介します。
障害認定への疑義や裁判での争点、遺言能力の有無などさまざまなケースで鑑定は証言能力の高い資料として採用されています。
信号の無い交差点を被害者が自転車で直進中、右側より直進してきた車と衝突、被害者が自転車から転倒し、右膝を受傷。
右膝脛骨高原骨折、右膝MCL、PCL損傷 約1年半の治療を余儀なくされる。
右膝には補装具を装着、右膝の知覚障害が残存、正座不能、階段の昇降困難
最初の後遺障害認定結果では右膝の疼痛が認定され14級9号
異議申立てでも、「画像上、右膝PCL・MCL損傷等の外傷性の異常所見は認め難い」として、12級13号を認めなかった。
疼痛等を裏付ける医学的所見として、画像における立証をいかにして行うかがポイント。
画像を精査するため、弊社へ画像鑑定を依頼される。画像鑑定の結果、右膝部は、前後十字靭帯部分断裂、内側側副靭帯及び外側側副靭帯損傷、内側半月板水平断裂所見など、複数の軟部組織の損傷所見を指摘できた。また事故後3日目の画像で活動性の炎症所見を認めていたため、事故による衝撃が大きかったこと、その他画像では、滑液包液の貯留を認め慢性疼痛の原因になっているとしてコメントを付した。
【鑑定結果】前十字靱帯部分断裂/前十字靱帯脛骨付着部剥離骨折/後十字靱帯部分断裂/内側側副靱帯部分断裂/大腿骨内果剥離骨折/外側側副靱帯部分断裂/内側半月板水平断裂(中節~後節)
自賠責保険・共済紛争処理機構では、「MRI画像では、右膝後十字靭帯断裂、右内側側副靭帯損傷等の外傷性の異常所見が認められる」として、12級13号を認定された。
交差点で前方に車輌(ダンプカー)があり停止中、ダンプカーが右方から直進車輌に道を譲ろうと後方へ進行したため、逆追突される。
頚部・肩部・腰部への疼痛、上肢の痺れ、両足部の症状
当初は脊髄損傷の診断があったが、別医療機関にて脊髄損傷は否定
初回申請時は、「提出の画像上、経年性の変性所見は認められるものの、本件事故による・・外傷性の異常所見は認められない」として、自覚症状を裏付ける画像所見はないと後遺障害非該当とされた。
画像所見と自覚症状との整合性、すなわち、画像で症状を説明できる所見の指摘ができるか否かがポイントとなる。
頚椎・腰椎ともに硬膜嚢への圧迫が認められ、脊椎洞神経への刺激による疼痛誘発の可能性を指摘した。また、受傷2日後に撮影した頚椎・腰椎MRI画像では、ともに急性期を示唆する病変の指摘、及び神経根への軽度の圧迫を示唆する所見も認められ、これら画像所見で自覚症状を説明することが可能であることを鑑定書内でコメントした。
【鑑定結果】《頚椎》C5/6、C6/7椎間板ヘルニア 《腰椎》L3/4、L4/5椎間板ヘルニア
頚椎・腰椎双方の部位で、非該当から14級、併合14級が認められた。
交差点を青信号で直進中、右折してきた相手車輌と衝突し受傷。当時渋滞が起きており、見通しも悪く相手車輌が被害車両を見落としたために衝突。その衝撃により被害車両は飛ばされ信号待ちをしていた他の車両に衝突。
頚椎椎間板損傷、左肩関節捻挫(関節拘縮)、右母指挫創、左頚部痛・頚部ROM制限、放散痛が常にある、左肩から上肢への放散痛
治療状況、症状推移などから、「局部に神経症状を残すもの」として、14級9号を認めるも、左頚部痛、放散痛、痺れ、左肩痛の症状に関して、画像上、脊髄・神経根等の圧迫は認められず、12級13号認定は否定された。
画像所見から、症状と整合するような神経根圧迫所見が確認できるか、神経学的検査所見と整合する画像所見が確認できるか、がポイント。
C4/5、C5/6レベルで明らかな左C5、C6神経根圧迫所見が認められた。その支配領域に整合する知覚障害と麻痺があることも確認できた。さらにヘルニア病変部には、急性期を示唆する輝度変化も指摘できた。以上より、このヘルニア病変は事故で生じた病変であること、知覚障害、麻痺の症状の原因となり得ることを説明した。
【鑑定結果】左C5、C6神経根圧迫
鑑定書を添付して異議申立てをした結果、患者の症状が医学的に証明されており「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、12級13号の上位等級が認定された。
平成 25 年 11 月、交差点にて患者のバイクが相手方四輪車と衝突し、転倒・受傷した。患者は意識消失し、衝突前後の記憶なし。
左肩鎖関節脱臼、外傷性左肩関節拘縮
左肩鎖関節について観血的脱臼整復術実施(肩鎖関節 wire 抜去彎曲、肩鎖抜釘)
平成 26 年 6 月症状固定
自覚症状:頚部~左肩の疼痛、左肩可動域制限
画像や裸体写真から鎖骨変形残存が認められ、変形障害 12 級 5 号が認定された。しかし、画像において確認される所見は左肩鎖関節脱臼の所見にとどまり、症状・治療経過を勘案しても、本件のような高度な可動域制限が生じるものとも考え難いとして、左肩関節機能障害の後遺障害は否定された。
自賠責上、肩関節機能障害が後遺障害等級として認定されるには、まずは受傷部位の器質的損傷(脱臼後の関節部位の状態、関節拘縮の有無、神経損傷等)が認められること、その上で可動域制限があることが要件となる。
本件においては、可動域が健側の 3/4 以下に制限されていた。
そのため、左肩画像から、機能障害が発生し得るだけの器質的損傷があると考えられるかどうかがポイント。
棘下筋の遠位~付着部で高信号(白色)域を認め、損傷を認めた。連続も途絶えており、部分断裂と考えられ、事故との因果関係を含め説明した。
左鎖骨遠位に骨折後変化を認め、脂肪抑制 T2 強調像で高信号域を認め、治癒過程を含め骨折後変化を認めた。これは肩鎖関節の安静時の痛み、押した時の痛み、運動時の激しい痛みと腫れなどを生じ得る病変である事を説明した。
その他に肩鎖関節亜脱臼や肩鎖靭帯損傷など、今まで指摘されなかった病変について説明した。
【鑑定結果】腱板損傷 鎖骨骨折後変化 肩鎖関節亜脱臼 肩鎖靭帯損傷疑い
新たに左肩関節可動域制限による関節機能障害(12 級 6 号)が認定され、11 級に上位変更となった。
被害者が自転車に乗っているときに自動車と衝突し受傷した。
第一腰椎圧迫骨折、仙骨不全骨折、腰椎シュモール結節
自覚症状:腰椎
「画像上、第一腰椎シュモール結節が認められるものの、本件事故による骨折や脱臼等の明らかな外傷性の異常所見、脊髄や神経根への圧迫所見はいずれも認められない。」として非該当とされた。
1. 椎体の変形
2. 疼痛の原因になる所見の有無
画像鑑定では、シュモール結節が一般的に言われる慢性病変のものとは全く異なり、局所的な骨折部に椎体内ヘルニアを生じているとして、圧迫骨折を認めた。本件では、変形が典型的な圧迫骨折とは少し異なるため、経験の少ない医師では見落としてしまう可能性を示唆し、また椎体高測定値よっても客観的に圧迫骨折が明白であることを解説した。
【鑑定結果】L1高度圧迫骨折
腰椎圧迫骨折について、後遺障害等級11級7号「脊柱に変形を残すもの」が認定され、和解が成立した。
加害者が交差点を右折した際、直進する被害者運転のマウンテンバイクと衝突し、被害者は車のボンネット上で回転して地面に落下した。
頚椎捻挫による右上肢痛、右握力低下
主治医のMRI画像所見では、C6/7レベルで圧迫所見ありと診断され、圧迫所見と自覚症状との間に「矛盾が生じることはない」との意見を述べられているにも関わらず非該当の判断となった。やむなく、訴訟案件となる。
自賠責保険では、画像での圧迫所見を認めておらず、自覚症状を裏付ける客観的な所見の存在がポイントとなる
MRI画像鑑定結果では、C6/7レベルにて、右C7神経根の圧迫を認めた。さらにヘルニア病変部では、急性期~慢性期への移行期と思える輝度変化所見が認められ、症状を引き起こしている原因と考えられた。そこで裁判用意見書では、ヘルニア病変部を画像を用いて裁判官にもわかりやすく図で説明し、自覚症状と画像所見との整合性について解説した。
【鑑定結果】C6/7頚椎椎間板ヘルニア 外傷性ヘルニアの可能性
画像上の神経根圧迫所見が認められ、民事訴訟上で、14級認定を前提とした和解が成立した。
患者車両が道路上に停止していたところ、除雪作業中の除雪車が後方左右確認不十分のまま後進してきて、患者車両左側後方付近に衝突し、その衝撃で負傷。
《後遺障害診断書上の診断名》頚椎捻挫、腰椎捻挫、腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症の増悪、左第9肋骨骨折
《自覚症状》頚部痛、左胸部痛、腰痛、左殿痛、左下肢痛
後遺障害診断書上「左下肢S1神経根領域に疼痛としびれあり」、「腰椎MRI検査によってL5/S1椎間板ヘルニアを認め、左側S1神経根の圧排所見あり」とされているにも関わらず、後遺障害非該当とされた。やむなく、訴訟案件となる。
MRI画像上異常所見が認められ、それが外傷性のものと評価しうるか。また、所見が患者の症状と整合するものであるか。
自賠責保険では、腰椎捻挫による椎間板ヘルニア所見を否定していたが、画像鑑定の結果、L5/S1椎間板ヘルニアが指摘され左L5神経と左S1神経の圧迫が確認された。鑑定結果を受け、これらの病変部位が本人の訴える腰痛、左下肢痛と整合すること、ヘルニア病変の輝度変化の度合いが受傷時期と整合するという具体的な解説、予後に関する所見等の内容を含む医学的な意見書を提示した。
【鑑定結果】L5/S1椎間板ヘルニア
腰椎圧迫骨折について、後遺障害等級11級7号「脊柱に変形を残すもの」が認定され、和解が成立した。
相手車・被害車両ともに中型トラック同士の事故。相手車の左側面に衝突し、被害車両の運転席部分は大破し、被害者は足を車体に挟まれ身動きが取れない状態であった。
《左下肢》左近位脛腓関節脱臼骨折、左腓骨骨幹部骨折、左前脛骨動脈断裂、左第4趾末節骨開放骨折、左膝皮膚欠損創
《右膝》右膝脱臼、右膝外側半月板断裂、右膝LCL断裂、右膝PLC断裂、右膝ACL断裂
《自覚症状》両膝の疼痛、右膝の歩行時の不安定感、連続歩行制限あり、両下腿の疼痛、しびれ
左下肢の瘢痕障害で12級相当認定。左下肢の神経症状は14級9号、右膝の症状は、14級9号認定、これらの傷害を併合した結果、併合12級と認定された。
左下肢及び右膝の症状が、医学的に証明可能かどうか。
左下腿の骨折は、骨癒合が進んでいたが、MRI画像より前十字靭帯、後十字靭帯、外側側副靭帯の部分断裂、内側半月板の水平断裂が複合的に確認された。さらに、左下肢MRI、T2脂肪抑制横断像では、大腿二頭筋、前脛骨筋、後脛骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋などにも高信号を認め、慢性的な炎症状態であることが確認された。一方右膝部では、明らかな骨折は認めなかったが、右膝LCL、右膝PLC、右膝ACLの断裂及び半月板の水平断裂を認めた。途中半月板縫合術及び右膝LCLへの靭帯断裂縫合術が施行されていたが、右膝ACL、右膝PLCの断裂はそのままの状態となっていた。さらに画像上、右膝ACL損傷時の二次所見である前方偏位も認めた。以上より、自賠責保険では「本件事故受傷による外傷性の異常所見は認めない」「骨癒合は変形もなく良好である」として症状を裏付ける医学的な証明を否定していたが、軟部組織の損傷が顕著であり、それが本患者の症状を裏付ける医学的な証明になり得ることを鑑定書にて言及した。
【鑑定結果】《左下腿》脛腓関節開放性脱臼骨折、腓骨骨幹部骨折、前脛骨動脈断裂、腓骨動脈断裂、脛骨骨挫傷、前十字靭帯部分断裂、後十字靱帯断裂、外側側副靱帯部分断裂、大腿四頭筋腱部分断裂、内側半月板水平断裂
受傷250日後における左膝外側の皮下、大腿二頭筋、膝窩筋、前脛骨筋、後脛骨筋、長腓骨筋、単腓骨筋、長趾伸筋、長母指屈筋の慢性炎症性変化
《右膝》前十字靱帯断裂、後十字靱帯断裂、外側側副靱帯断裂、外側半月板中節水平断裂、大腿四頭筋腱部分断裂、膝窩筋挫傷
腰椎圧迫骨折について、後遺障害等級11級7号「脊柱に変形を残すもの」が認定され、和解が成立した。
発作性上室性頻拍症のアブレーション治療を受けた後に房室ブロックを生じ、永久ペースメーカー留置となった。難治性下腿潰瘍も生じており、術後管理の適切性、手術手技のミスに関して鑑定。
1. 術後管理にミスはなかったか。
2. 手術手技にミスはなかったか。
1. アブレーション術後の合併症としての動静脈瘻が下腿浮腫の原因であり、これに関して診療記録分析の結果、適切な経過観察の様子が確認できない。そのため診断が遅れ、難治性下腿潰瘍となり、患者に不利益を生じた。
2. アブレーション治療とペースメーカー留置の間に因果関係はあると思われるが、手技の失敗ではなく経過から起こりえることであった。ただし治療歴からするとペースメーカー留置のリスクが高いことは十分説明すべきであったと思われ、診療記録からはその説明責任を果たしていたとは言い難い。
乳癌検診でカテゴリー1とされたが、数か月後に乳房のしこりを自覚し受診したところ、カテゴリー4、細胞診結果陽性となった。検診での見落としでないか、鑑定。
検診マンモグラフィーにおける画像所見。
カテゴリー1とされた検診時のマンモグラフィー画像では明らかな石灰化陰影が認められ、検診マンモグラム読影の石灰化診断フローチャートに照らして評価すると、カテゴリー5ないし4と判定される。検診時点において、精密検査を推奨すべきであった。
高血圧や心房細動、脳梗塞の既往がある患者で、内視鏡検査等のために入院したが、入院3日目に死亡した。死因は小脳出血とされた。入院治療経過について、適切な対処がなされていたか鑑定。
1. 小脳出血の生じた時期。
2. 診療の適否。
3. 救命できた可能性。
1. 死亡診断書に記載された時期より以前に嘔吐等の症状があり、この時点で脳出血が起こっていた可能性がある。
2. より早い時期に脳血管障害を疑い頭部CTを施行すべきであった。
認知症のあった父が再婚したことになっていることが発覚したが、家族に知らされていなかった。認知症の程度からすると信じがたく、婚姻能力の有無について鑑定。
1. 認知症が軽度であったとの相手方主張。
2. 婚姻時における認知症の程度に関する評価。
1. 相手方が提出する診断書は、診療録を検討したところ専門医が適切に評価したものとは捉えられず、信頼性を欠くものである。
2. 婚姻当時において顕著な近時記憶障害が認められ、婚姻による身分の変化を理解し記憶として定着できた可能性は極めて乏しい。
介護認定の主治医意見書にて認知症高齢者の自立度ⅡBとされていたころに自筆証書遺言書を作成されているが、その後ⅢBへと進行していたことから、当時の遺言能力に疑義があり、鑑定。
1. 認知症の経過に関する分析。
2. 遺言書作成時点での認知症の程度。
1. 画像所見等からアルツハイマー型認知症と考えられ、随時の評価より、遺言者の認知症が緩徐に進行していたことが裏付けられる。
2. 遺言書作成時点での近時記憶障害は顕著であり、自らの財産状態を把握し、主体的判断をすることは困難である。
脳梗塞後遺症のある遺言者の状態から、複雑な遺言を作成する能力があったとは考えられず、鑑定。
1. 脳機能障害。
2. 口授能力。
1. 理解力・判断力の低下があり、遺言公正証書に記載される高度な内容は本人の思考力の水準を超えるものであった。
2. 構音障害または失語症によるコミュニケーション能力の障害程度から、遺言作成時において本人が伝達可能な内容はごく単純な内容に限られ、本件遺言内容の口授は困難であった。
交通事故により脳挫傷・外傷性SAH・急性硬膜下血腫などを受傷し保存加療中、敗血症性ショック等により死亡。死因の種類を病死及び自然死とされている事などから事故との因果関係が否定された。
事故と死亡との因果関係の有無。
頭部外傷の増悪による血圧低下や嘔吐から誤嚥性肺炎を発症、敗血症や腸管壊死へと進展し、敗血症性ショックにて死亡に至った。
施設内で転倒、頚髄損傷となり、その後ADLが低下、約2年半後に心疾患にて死亡し、転倒事故と死亡との因果関係が否定された。
事故と死亡との因果関係の有無。
頚髄損傷による交感神経障害と、それに伴う循環障害が原因で心肺機能の低下を来し死亡した。
業務中に一過性意識障害を起こし搬送され、労災申請では支給決定がなされたが、勤務先より高血圧性脳症の発症が認められないとされた。
高血圧性脳症の発症の有無と、労働との因果関係の有無。
血圧変動の存在や頭部画像所見、高血圧症の存在から、高血圧性脳症を発症していたとするのが妥当。また発症前の時間外労働時間の推移を踏まえると過重業務と考えられ、高血圧性脳症と過重業務との間に因果関係が存在する。